「派遣はエレベーターを使うな!、食堂に行くな!」。ブラックバイト、差別の構造 - コラム

    「派遣はエレベーターを使うな!、食堂に行くな!」。ブラックバイト、差別の構造

    ブラック仕事

    安く使えるものは安く使いたい――般的な経営の発想である。まして、体力のない企業ならば、効率化の名のもとにリストラをする。かくして、派遣市場に吐き出される中高年……そこは奴隷労働の現場だった。東大卒、元アナウンサーが体験した、ブラック人材派遣業界の実態とは。


    ◆派遣労働者差別も企業にとっては“善”

    ――派遣労働についてはこれまでも社会問題化しています。なぜ、こうした状態が続いているのでしょうか?

    中沢:そもそも派遣労働者は合理化・効率化のための雇用形態です。派遣先企業にしてみたら、世話をするのはムダ、こきつかわないと損という発想なんでしょう。だから、派遣はエレベーターを使うな、汚れるから食堂も使うな、ボールペン1本貸すな、となる。主従関係をはっきりさせて、怒鳴りつけて、威圧して、圧迫して働かせる。

     派遣労働を使って効率化しないと、生き残れないとコンサルタントに言われたら、経営者は納得し末端の社員に指示を出す。指示された社員もそれに従うでしょう。倉庫管理の仕事で新入社員の間違いを注意しアドバイスしたら、「派遣のくせに」と辞めさせられた人もいますよ。差別を容認する間違った意識があって、自分の会社の利益に直結するとなれば堂々とやってしまう。企業側には、それが“善”ですから。

    ――ただ、労働基準法と労働者派遣法があるわけで、なぜ、違法なことがまかり通っているんでしょうか?

    中沢:労働者を守る労働基準法と、好きなときにだけ労働力を確保するための労働者派遣法は矛盾する存在です。その矛盾解消のために、労働者派遣法は建前でできています。たとえば労働者派遣法には、労働相談が持ち上がったとき派遣先企業を呼ぶことができると書いてあります。でも、義務ではありませんから、企業はわざわざ出向かないですし、人材派遣会社だって、「え? 知りません」で済む。そんな案件に相談員だってのってくれません。

    ――派遣労働者に対する責任の所在が曖昧だということでしょうか?

    中沢:基本的には派遣労働者への責任は、雇用主である人材派遣会社にあります。しかし、派遣先企業での労働者の行動を逐一知る立場にないから、現場で起きたことには派遣会社に責任がないというのが派遣法です。労働者の扱いは両社で話し合うとなっていて、これではどちらも責任とらないですよ。

     また、法律の建前では、派遣先企業に対し、契約に反することがないよう適切な措置を講じなければならないとあります。でも、これにも罰則はありませんから、そもそもコスト削減で使っている派遣労働者に配慮するなんてことを企業が積極的に行うわけがない。

    ――それでも、派遣仕事のニーズは高まり、派遣事業者数は増加しています。

    中沢:人材派遣会社は、リクルートスタッフィングを頂点に竹中平蔵氏が会長を務めるパソナといった上位5社から、ワンルームマンションの一室で営業するところまでいろいろです。法律によるならば、派遣先の待遇改善に動くべきは人材派遣会社で派遣先企業と十分話し合い改善しなくてはいけないとあるのですが、競争激化するなか、“お客さま”である派遣先にものが言える人材派遣会社なんてないでしょうね。

    ――構造的に問題があるわけですね?

    中沢:また労働者側も派遣先企業からの締め付けによく応えるんです。どうしてこんなに従順なんだろうって思うくらいに、理不尽なことにも従う。でもそれは、他に行き場がないからですよ。特に中高年はコンビニだって、ファストフード店だって雇ってくれない。

     でも、派遣会社はとにかく仕事はくれるんです。どんな目にあっても我慢すれば7000~8000円の日銭は入る。それで生活はできるわけですから、それ以上は望まないようにしようよと現状肯定してしまう。何か言えば、派遣会社から「明日から来なくていいです」と言われて、終わりですから。

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    【中沢彰吾】
    1956年生まれ。東京大学卒業後、1980年毎日放送(MBS)入社。アナウンサー、記者として勤務。2006年、身内の介護のため同社を退社し、フリージャーナリストに転身。書籍や週刊誌、夕刊紙の取材・執筆活動のかたわら、派遣会社に登録。日雇い派遣業に従事している。